サービスロボットの安全設計の基本である3ステップメソッドの後編です。前編ではその世界観や背景を簡単に説明しました。
中編では具体例を示しながら説明していきます。ただし、規格に書いてある通りに手順を説明してもわかりにくいかもしれないので、大幅にデフォルメ?して説明します。
具体例
具体手的な例として、空港にポーターロボットを導入することを考えてみましょう。提供するサービスは、お客様のスーツケースなどの重い荷物を指定された場所まで運ぶことです。
【使われる環境】
空港のターミナルビルで、一般の旅行客や観光客がいます。子供から老人、障害のある方もおられます。それなりの密度で人がいます。
【ロボットの機能】
SLAMといわれる自律移動で50kgまでの荷物を荷台に乗せて運ぶことができます。使用者はタッチパネルで荷物の運び先を指定します。例えば、バスターミナルからチェックインカウンターまで運んでもらう。
リスク分析
上記のような状況でどんなまずは危険が潜んでいるか考えます。最初に思いうつくのはロボットが人にぶつかってケガをさせるかもしれない、でしょうか。他にも、階段から落ちる、ものにぶつかって設備を破損させる、ロボットがトラブルで炎上して火事になる、子供がいたずらする・・・
色々ありますね。皆さんでブレストして洗い出していきましょう。以後の話をシンプルにするため、ロボットの故障に関するリスクはないとし、以下の3つリスクのみ考えます。
- ロボットが階段から落ちて、下にいる人をケガさせる
- ロボットが人にぶつかり、ぶつかった人をケガさせる
- 子供がロボットを乗り物と思って乗り込み、急停止時に転落してケガをする
どれも起きたらピンチな感じです。これだけでもいいのですが、規格を見ると危険源の特定、という言葉が出てきます。上の3つの危険を引き起こす源は何か?ということです。それはロボットの持つ(運動)エネルギーです。荷物を運ぶロボットである限り、それなりの質量があり、移動しているのでエネルギーを持っています。これが危険源になります。
子供も危険源といえますが、この場合は乗り物と思わせてしまう構造、形態でしょうか。まさに「合理的に予見可能な誤使用」となります。悪意や意図的なルール違反に基づくリスクは考えなくていいですが、乗れそうな雰囲気があるのなら、つい乗ってしまうことを想定すべきです。ただ、子供の場合はちょっと難しさがアップします。分別のある大人より予見可能な誤使用の範囲が増えるので。空港を18禁にするわけいかないですから。
(運動)エネルギーもサービスを提供するために必要なので排除できません。それに起因するリスクはマネージメントする必要があります。
リスクは「危害の発生確率およびその危害の程度の組み合わせ」ですので、上記の危害がどれぐらりの頻度で発生するかも考える必要があります。めったに発生しなければリスクは低くなります。1~3共に空港の営業時間?内なら、容易に発生すると考えられますので、空港でポーターロボットを動かすには対策が必要となります。その対策のやり方の指針が3ステップメソッドです。
後編へ続きます。
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